その火葬場は、以前、義妹の亡き骸を荼毘に付した場所だった。 偶然にも同じ小さな洞窟を思わせる場所へと、今度は夫の叔母さんの体が入って行った。 骨になるまでの時間、親戚も年寄りが多いため、 とても穏やかに故人の思い出を語って待つ事になった。 時間になると、そういうシステムなようで館内放送で呼ばれた。 係官の礼儀正しい作法も、以前見たのと同じだった。 最後に〝のど仏〟を拾い上げた時の話も一緒だった。 「本当に合掌した仏様のような骨の形をしている」と初めてみた親戚の誰かが呟いた。 来る日も来る日も同じ作業を行う係官。 この職業についたのは何故なのだろうかと、ふと思ったが、 そう思っただけで、その人の見事な所作をただ凝視し続けた。 こういう場所に段々と慣れていく自分を大人と思うべきかとも思ったが、 出来れば慣れたくない場所だと思った。 6年前に弟の妻が突然死した。 夜、普通に布団に入り、そのまま朝冷たくなっていた。 聞いた事はあったが、それが身内に起こるとは想像しなかった。 お通夜、葬儀が、突然の出来事のせいで狂ったように慌しく過ぎて行った。 あの時は何の余裕も無かった。穏やかな時間は流れて無かった。 小学生の甥が喪主の弟と骨を拾う姿が、あの火葬場で甦った。 残された幼稚園児の姪と小学生の甥を、これからどうやって育てるのかと、 自分の子でも無いのに、それだけが気がかりだった。 私の息子らが親元を離れて手がかからなくなり、旅行などを楽しんでいた頃だった。 この辺りを堺に、旅は出来なくなった。 同居をしはじめた母が倒れたのはその三年後だ。 義理の妹が他界した時も、母が生死をさまよった時もブログで詳しく書くのは控えた。 または書いても、後で削除した。 なぜそうしたのか今になって考えてみると そういう事はあえて文字に残すのは悪い事のような気がしたのだ。 でも、書いたままにすれば良かったと少し後悔している。 何かあった時に自分がどうだったのか、 後からなら冷静に判断出来るという事が最近になって分かって来た。 書くという手段でも何でも生きてる証のようなものが欲しいと思う時がある。 若い頃は何かしたいと思ったはずだが、 結局何も出来ないまま、どんどんとただ歳を重ねていくだけだと最近は居直っている。 稚拙な文章で過去の話を消したいとも思うが、 その時はそれが最大の表現の仕方だったのだから仕方無い。 意外に読んでる人は自分が気にするほど、どうでも良いと思ってるだろうし。 綺麗事ばかりで無い、ありのままの自分を書く事も意味があると思う。 なかなかありのままを書くのは勇気がいるが、なるべくそうありたい。 他人からしたら何でも無い事でも、 後で読み返して、馬鹿だったとか、頑張ったんだとか。 そう思える場合もある。 じゃ、日記帳にでも書けばと思うかもしれないが、 インターネットを使い世界に向かって書くという行為が、いい塩梅に緊張感を伴う。 世の中に出来る限り正直に向い合って書いて行きたい。
by mismis10
| 2011-07-27 23:21
| 日常あれこれ
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